中屋万年筆　筆記科学研究セクション

皆様から国内外から頂戴した6,000件超(2005年10月時点)の『筆記カルテ』を基に基本的には下記のプロセスにより筆記特性を分析しております。　

　お客様が高額な中屋の万年筆を購入される際に真剣にカルテにご自分のデータを入力頂いていることで個々のデータの信頼度はとても高く、統計的にも有意なものが日々蓄積されております。
人間の筆記特性を計量化した研究資料は今迄になく、私達中屋万年筆においても『筆記を科学する』にあたり大変有用なものとなっております。
日々蓄積されるデータを解析して今後の万年筆作りに活用出来るものは極力還元していく所存です。

例　；　
①　ギフトの際　ギフトの際には万年筆を贈られるご本人様には、納品後ペン先のカスタマイズを正式にするサービスをさせて頂いておりますが、それても当初より８項目ある筆記カルテの中で、例えば『ペンの持つ場所が分かればペン軸の傾け方が分かる』、『筆圧が分かれば書くスピードが分かる』等贈られる方の筆記特性をお教え頂く負担を軽減出来ないか？

②中字、細字、、、など生地としてあるペン先を使用してその中間のペン先を手により製作する業務をしていますが、カルテの経験的データにより、お客様に逆にその太さをご提案できないか。

解析にあたっては基本的に下記のプロセスを実施しています。

　(1)　データの整備作業 　　　　　
　　　上記6,000件の母集団の中からデータとして有意なもののみを抽出。

　(2) 　データの分類作業 　

日本国内、海外に分類
上記の中で、男性・女性に更に分類
年代別に更に細分化
自分用とギフトに細分化、最後に利き手(左利き、右利き)に細分化

上記に細分化された各カテゴリーを単純集計(下記は４年前　サンプル数（母集団）約1,500の時のものです)

　キャップなしで書けるのであればその方が良い。

（3）クロス集計

国内自分用右利きのグループで筆記カルテの各項目を単純集計の後、グループに分けて各々のグループの属性を見ています。　

　(4 )カルテの内容を数量化
例; 　筆圧は強いほうですか?
カルテでは　強い　普通　弱い　となってる部分を　強い→1、普通→2、弱い→3 と各項目を数値に置き換える

上記の結果だけではありませんが多方面からの切り口による分析により、その７０％は実際に私達が経験的に感じている結果に帰着していますが、残りの３０％では新しい発見や、むしろ今迄の認識（常識・通念と言っても良いかもしれません）とは反対の結果が示唆されています。
　例えば、
　▲海外（外国人）の方の方が筆記時に筆圧は日本人よりも低い方が多い。
　▲海外の方が中屋に求めるペンは極細など細字系が日本人の方が求めるよりも多い。
　▲力が弱く、筆圧が低い方は軟らかいペン先（中屋で云う軟筆）を求める方も多い反面、以外に硬いペン、（しっかりとしたペン先）が結果的にフィットしている。
　などです。 　

林のⅢ類により、カルテの諸項目（お客様の筆記特性）同志の関連を見ています。
大きいデータでもあり公表は控えさせていただきますが、各々にプロットされた点同志の距離が近ければ近いほど相互の関連が深いものです。
この点同志をひとつの領域として把握するなどここから更に解析を深化させることで筆記特性（＝お客様の潜在的な要望）が把握出来ればと考えています。

相関分析とは若干異なりますが、８項目あるのカルテの属性同志の関連を解析したものです。
全６４通りの組合わせを、国内／海外・男性／女性・左手／右手・・等により数百の組み合わせによりその関連を探っています。
上記はあるグループの『文字の大小』と『筆圧』を解析している一例ですが、筆圧の強い人は小さい字を書かない傾向にあることを示唆しています。

各種万年筆のマッピング

目盛りが小さい為に個々のデータは現在ご覧頂けませんが、中屋独自の方法によりペン先の弾力（Ｘ軸）と万年筆の重心（Ｙ軸）を各5本について計測し、その平均値を座標にマッピング、これとお客様個々の筆記特性によるデータとの関係が掴めればと研究しています。
座標には中屋の主要アイテム（通常のペン先、軟筆、特軟）をはじめパイロット、モンブラン、ペリカン、ウォーターマンなどもプロットしています。

現在皆様に公開出来る部分は以上になりますが、今後も単に経験と勘のみに依存することなく、皆様から頂きました筆記カルテを活用し、よりよい筆記が得られるように努力して参りたいと思っております。